事業所設立の歴史は、1989年に神戸英子 元施設長が地域の障害者1名をボランティアで自宅に預かり、現在の制度で言うところの「日中活動支援」をしていたことに遡ります。その後、自分の子供も預かってほしいという要望が親から寄せられて自然と増え始め、小規模通所授産所「長良ひまわり作業所」を開設しました。
2003年に法人格を取得し、「長良ひまわり社」と名称変更しました。
その後に関係者から寄付を募って土地を購入し、2006年に日本財団と岐阜市の助成を受けて現在の建物を新築しました。
「長良ひまわり社」の作業項目としては、紙袋製作等の下請けが中心ですが、自主製品としてクッキー、シフォンケーキ等のスイーツ類も製造販売しています。
建物の1階は「喫茶ひまわり」となっており、併設しているホールは、ヨガや絵画教室などのサークル活動に利用され、地域の方たちの集まる憩いの場となっています。
もともと下請け作業が中心であった「長良ひまわり社」が、現在のように本格的に自主製品としてクッキーやケーキ類を製造出来るようになったのは、「喫茶ひまわり」をオープンした後のことです。
ホール係のパート職員として参加することになったFさんの夫Kさんが、職歴35年のベテランケーキ職人であることがわかったのです。
Kさんは、その時すでに心臓の病気を患い、自宅療養中でしたが、「ちょっとだけ手伝ってください」と神戸 元施設長に口説かれ、職人としての腕を提供してくれることになりました。
「療養中の身ではありましたが、何もしないで家にごろごろしているより、身体のためには良いかなと考えてお手伝いすることにしました。実は、昔からこういう仕事をしたいなと憧れていたのです。自分の技術を人のために役立てるという、いわば社会奉仕的な仕事でしょ。美味しいお菓子を通じて、たくさんの人たちと交流が持ちたいという純粋な気持ち」と 当時Kさんは話していました。
「長良ひまわり社」に参加したKさんが、さっそく施設のメイン商品とするために作った商品が『醤油さぶれ』。
このサブレはKさんが長年営んでいた洋菓子店のオリジナル商品。岐阜の食材を使ったスイーツを作りたいという想いから、息子さんと共に考案された製品です。
サブレの生地は、風味の良い発酵バターと刻んだアーモンド、そこに「たまり醤油」を練りこむという贅沢な仕様。焼く直前にも表面に「たまり醤油」をサッと塗って焼き上げた、まったく新しい感覚のスイーツです。
甘いサブレと口の中にほんのり広がる醤油の香ばしい味のミスマッチ感が、斬新な味わいを醸し出しています。
尚、醤油さぶれの ほのぼのとしたロゴは、染色家の田口ひさ子さんに描いていただきました。
田口さんの温かい人柄にあふれた素敵なロゴです。
田口ひさ子さんの工房
『麻処さあさ』http://www.asadocolo.com
「醤油さぶれ」の味の決め手は、何といっても醤油。Kさんがこだわったのは、地元岐阜・長良地区で三代にわたって伝統的な手づくりの醤油造りの伝統を頑なに守り続けている「山川醸造株式会社」さんのたまり醤油「みのび」です。
たまり醤油とは、東海三県(愛知・岐阜・三重)でのみ生産される醤油の一種。たまり醤油の特色は、旨味と甘みの濃さ。
大豆のみを原料とし2年以上も発酵させるからこそのコクが生まれてくる。
長良ひまわり社の「醤油さぶれ」は、「山川醸造株式会社」さんでも「たまりのさぶれ」として販売していただいています。
おかげさまで、「醤油さぶれ」は多くのお客様に愛され、
『デパートで売っていてもおかしくない一流の商品ですよ。自信をもって!』
という嬉しいお言葉をいただいた事もあり、障がい者施設の自主製品の一つでありながら、ベテランケーキ職人直伝のレシピというワンランク上のクオリティでお届け出来ています。
昨年度(令和4年度)「長良ひまわり社」の利用者さんの平均工賃月額は15,101円でした。内訳は下請け作業43%、自主製品57%です。
コロナ禍で下請け作業が減ったり、自主製品でもイベントなどの外販売が中止となり、販売機会が減少したことも要因の一つです。
下請け作業だけでは、たいして工賃アップは望めません。まずは、コロナ前の18,000円を回復し、さらに20,000円、30,000円とアップしていく為には、自主製品の売上アップが必須です。
そのための最大の武器が「醤油さぶれ」だと思っています。
美味しい洋菓子を作っている施設というのは全国に多いと思いますが、自分たちだけのオリジナル商品というのはなかなかありません。Kさんが提供してくださった大切な商品なので、全国に向けて自信を持って売り出していきたいと思っています。
是非多くの方々に、この味を試して頂きたいです。一度食べると、どこか懐かしいこの味が癖になりますよ。
喫茶ひまわり ネットショップ…『醤油さぶれ』はこちらからご購入いただけます。
写真 清流長良川と金華山、長良ひまわり社の仲間(名古屋港水族館にて)
※このSTORYは、2010年11月に「SELP訪問ルポ」として日本セルプセンターさんにご掲載いただいたものを元に作成しました。